2023.09.29
絵画について|日本画
目次
皆さん、日本画はお好きですか?
今年(2023年)、明治18年に明治天皇が後楽園を訪れ開かれた歓迎行事の様子を描いた日本画が、岡山市内で発見され話題になりましたね!
歴史の一瞬が閉じ込めたような表現には迫力があり、当時の雰囲気を堪能できる貴重な美術品として保管されています。
日本文化ならではの発展を遂げた日本画。それとはいったい何でしょうか?
今回は日本画に焦点を当ててご紹介します(^^)
1.日本画の定義
それでは、まずは日本画の定義です。
「日本画とは」と検索すると【日本 の伝統的な様式を汲んだ 絵画】と出てきます。
ちょっと分かりにくいですよね。
いろいろと調べてみると、どうやら
【岩絵具・和紙・絹など、日本独自の伝統的な画材や技法などを用いて描かれた絵画】
ということのよう。
つまり…
日本画って実はあいまい
日本画の定義はあいまいなんです!
奈良~平安時代にかけて、中国大陸や朝鮮半島などから伝えられた絵画の様式・技法は「唐絵(からえ)」、対して日本的な絵画は「大和絵(やまとえ)」と呼ばれ、古くから区別されていました。
それが明治時代になると、ヨーロッパなどから新しい様式・技法などがたくさん入ってきて、それらを指す「西洋画」に対する言葉として(日本で哲学を教えていた)アーネスト・フェノロサが、1882年の演説で「日本画」と名付けたのが始まりとされています。
このフェノロサの通訳と助手を担当していたのが、東京美術大学の校長をしていた岡倉天心!
天心の想い描く日本画とは、伝統を守るだけではなく西洋画にも抗えるような世界の美術品であること。
今日の日本画は、アジアやヨーロッパなどの世界のさまざまな絵画の影響を受け発展してきたと言えるでしょう。
種類
日本画にはいくつかの種類があります。
- ● 大和絵: 平安時代に栄えた日本の風俗や風景を描いた絵 ※例:絵巻物。
- ● 唐絵: 中国で作られた絵画。もしくは日本で製作された中国風の絵。
- ● 水墨画: 墨一色もしくは濃淡をつけながら描かれた絵画。
- ● 南画(なんが): 中国の元・明時代の影響を受け、江戸時代後期に流行った漢詩文に素養のある人に好まれた流派。
- ● 洋風画: 江戸時代後期に西洋画を真似したり、宣教師から教えてもらったりしながら描いた絵。
- ● 風俗画: 庶民のいつもの生活のある一瞬を表現した絵画。
思ったよりたくさんありますよね!
それだけ、日本画の世界は幅広く奥が深いということ。
なんだか嬉しくなりますね♪
2.日本画に使われるもの
次に日本画に使われる画材と素材をご紹介します。
日本画特有のザラザラして、時々キラキラする感じ…
その正体はいったいなんでしょうか?
画材
まずは画材から。
顔料に膠(にかわ)と呼ばれる動物性の絵画用ゼラチンを混ぜると、日本画の絵の具として使えるようになります。
- ● 染料:動植物などから抽出した自然の着色料。
- ● 胡粉(ごふん):白色顔料の一つ。牡蠣・蛤・ホタテなどの貝殻で作られたもの。艶はなくマットな仕上がりが特徴。
- ● 岩絵具(いわえのぐ):天然石や鉱石をパウダー状に粉砕し、精製・乾燥させたもの。粒子の大きさが濃淡を左右する。焼くと色が変わるというおもしろさも。
- ● 膠(にかわ):動物や魚の腱・骨・皮膚を、石灰水に浸してから煮詰めて濃縮し、冷やしてめたもの。褐色~暗褐色。接着剤として使うゼラチン。
これ以外にも、アクセントとして金箔や銀箔を使用する画家もいます(^^)
素材(絹など土台となるもの)
日本画の土台となる素材には、次のようなものがあります。
- ● 漆喰(しっくい):消石灰にふのりなどの海藻から取れる粘着性物質と麻糸などの繊維・水を加えてよく練り合わせたもの。※砂や粘土を加えることもある。
- ● 和紙:他の紙と比べて繊維が長く、膠の強力な接着力に耐える柔軟性を持っていて、時間が経過しても画面に亀裂が生じにくい。
- ● 絵絹(えぎぬ):日本画を描くのに用いる平織りの薄地の絹織物。
見ているだけだと、表面のザラザラした絵の具が取れてしまいそうなイメージですが、膠を使っているのでしっかりくっついているのですね。
う~ん、やっぱり日本画はおもしろいですね~!
3.日本画のココがおもしろい!
次は日本画のおもしろさに触れてみましょう。
それは技法。
なんとなく知っているだけで、日本画を見るのが楽しみやすくなりますよ(^^)
特有の技法
日本画には、次のような特有の技法があります。
- ● 墨流し: 水を張り墨を落とし、表面に出てくる模様を和紙などで吸いとり染める。
- ● 毛描き:細い線で毛の1本1本をリアルに表現。
- ● 付け立て:下書きや輪郭を用いず、一気に描き上げ筆のタッチを楽しむ技法。
- ● 没骨:輪郭をつけず、色彩の濃淡で表現。
- ● 霞: 雲霞がよく用いられ、山の高低差や場面転換などに重宝される。
- ● ぼかし:絵の具で色をつけた後、水分を足し淡い色合いにする技法。
- ● 垂らし込み:墨や絵の具を入れ、乾かないうちに別の色を重ねる手法。
- ● こうろく:対象の周囲をなぞり、強調させる方法。
ひとくくりに日本画と言っても、それぞれ個性的な技法が使われていると思うと、今まで以上に楽しめます(^^)
岩絵具の質感
岩絵具は自然の鉱石からできており、ほかにはない質感が独特の存在感を放ちます。
粒子の大きさに応じて番号が振り分けられており、数字が大きくなるほど粒子が細かく、色合いが淡くなるのだとか。
また鉱物であるため角度に合わせて光沢度が変わり、見る角度によってまるで違う表情を見せてくれます。ドキドキワクワクしますね!まさに絵画のアトラクションや~!
ちなみに岩絵の具の粒子は、ほかの色と混ざらないので、重ねることでさまざまな表現をすることも、日本画のおもしろい部分なのです(^^)
現代アートとの融合も
最後は日本画の懐の深さ。
なんと言ってもすごいのは、現代アートとの融合もできるんです!
例えば2022年9/20。
ニューヨークで行われたオークションで160万円の高額で落札されたのは、日本画の技法を用いて街の一部を現代アートで描いた屏風(びょうぶ)でした!
日本国内でも、広告や化粧品とのコラボ作品なども見られ、私たちのふとした生活の中に日本画が馴染んでいるのです。
何気ない日常のなかで何気なく目にするものが実は日本画と関連しているなんて素敵ですよね!
「これってもしかして日本画?」と探してみるのも面白いかもしれませんね。
4.有名な日本画家
有名な日本画家を3人に厳選してご紹介します!
- 竹久夢二
- 東山魁夷
- 竹内栖鳳
ご存知の方も多いかと思いますが、順番に見ていきましょう。
竹久夢二(たけひさゆめじ)
竹久夢二は、大正ロマンあふれるモダンアートを代表する画家として有名。
特有のなにか言いたげな物憂げな表情の作風は、それまでの日本画とは一線を画し「夢二式美人」「大正の浮世絵師」などと呼ばれました。
夢二は多くの書籍の装丁・広告・日用品・浴衣などをデザインし、日本の近代グラフィック・デザインの草分け的存在とも言われています。
代表作の一つである【 女十題:黒猫 】 ※←タップすると画像検索できます(^^)/
黒猫と対比した女性の明るく柔らかな着物の色彩が際立っています。当時、これを目にした女性たちにとって、夢二の作り出す絵はまさにファッションアイコンだったのではないでしょうか。
今を生きる私たちが見ても、そのオシャレな世界観は新鮮さを失いません。
東山魁夷(ひがしやまかいい)
東山魁夷は昭和を象徴する日本画の巨匠。
独特な青と緑の色使いから「青の画家」「東山ブルー」と呼ばれています。
第二次世界大戦中に肉親を亡くすなど、過酷な体験で絶望の淵にいた魁夷。そんななかでも目の前に広がる田園風景の美しさに感銘を受け、尊敬の念を抱いたことから、生涯にわたり多くの風景画を残しました。
代表作の【 緑響く 】(←タップすると画像検索できます)では、青く澄んだ静寂な空気の中を堂々と歩む白馬と、湖面の反射によって作られた東山ブルーの美しさが、観る者を惹きつけてやみません。
竹内栖鳳(たけうちせいほう)
竹内栖鳳は海外で中国や西洋画を研究し、写実主義を取り入れた近代日本画の先駆者。
従来の日本画と西洋画の要素を融合させた革命家で「東の大観(※)西の栖鳳」と称されるほど半世紀におよび戦前の京都画壇を代表する偉大な画家です。
※横山大観…1868年(慶応4年 / 明治元年)- 1958年(昭和33年)「朦朧体(もうろうたい)」と呼ばれる、線描を抑えた独特の没線描法を確立した、日本を代表する日本画の巨匠。なかでも富士山を題材にした作品が多く「大観と言えば富士」と言われるほど。
代表作の【松魚(かつお)】(←タップすると画像検索できます)は、パンッとした鰹の堅く青光りする皮の具合や、まるまると太った体、新鮮さを思わせる青く澄んだ目など、ひと目で「釣り上げられたばかりの鰹の美しさ、命の瑞々しさ」を感じられます。
緻密で繊細な線と大胆に塗られた青の筆使い。栖鳳が「動物を描けば、その匂いまで描く達人」と言われたのも頷けます。
しかし美味しそうですね!眺めながらお酒が呑みたくなります(^^)
いかがでしたか?
今回は3人の日本画家に絞ってご紹介しましたが、ほかにも魅力あふれる日本画家がたくさんいます!
少しずつですが、記事に書いていきますので楽しみになさってくださいね。
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