2023.07.25
棗(なつめ)について|普段使いもできる骨董品
目次
茶道具の一つとして知られる棗(なつめ)。
抹茶の粉を入れて使いますが、コレクターがいるほど愛されているのはご存知ですか?
今回は華やかで奥深い棗の世界をご紹介します。
1.棗(なつめ)とは何?
茶道で使う棗(なつめ)とは抹茶の粉を入れる容器のこと。
今回はこの棗について、その名の由来や使い方など魅力をご紹介します。
なぜ「棗(なつめ)」というの?
そもそも、なぜ棗(なつめ)というのでしょうか?
その理由は、形が植物のクロウメモドキ科「ナツメ」に似ていたから。
拍子抜けしてしまいそうですが、どこか可愛らしく遊び心を感じるネーミングですね!
棗に用いられる素材は竹・木製が多く、稀に象牙や焼き物の場合も。
一般的によく目にするものは漆塗りで、柄は無地から華やかな蒔絵(まきえ)が施されています。
※蒔絵(まきえ)とは、漆で模様を描き「金・銀・スズ・色粉」などを付着させた漆工芸。
棗を見れば使う人の趣味・趣向まで分かると言われるほどバラエティに富んでおり、季節やお茶会の目的に合わせ使いわける楽しはもちろんのこと、観賞用としても親しまれています。
人から尋ねられたときに形状や塗り方、由来などが説明できるとカッコイイですよね(^^)
それでは棗の世界を一緒に見ていきましょう!
何に使うの?
棗は抹茶を入れる容器ですが、抹茶の中でもサラサラとした青緑色の薄茶(うすちゃ)を入れるというルールがあります。
昔は渋みや苦味がほぼない濃茶(こいちゃ)の方がランクが上とされていました。
反対に下級品とされた薄茶はあまり重視されていませんでしたが、 徐々に人気が出て、薄茶だけの茶会も開かれるようになりました。
当初は濃茶の入れ物と一緒に入れられていましたが、ランクが上がり薄茶専用の容器として、棗が使われるようになったのです。
お茶は気温の変化や湿気に弱く、蓋の閉め方が甘いと味や風味がすぐ落ちてしまいますが、その点棗は外部の空気を遮断してお茶の品質を保つために最適な道具と言えるのです。そういった意味では、棗はただ抹茶を保管する容器ではなく、お客様に美味しい抹茶を運ぶためのなくてはならない相棒なのかもしれません。
ちなみに濃茶は「茶入れ」と呼ばれる陶器製の容器に入れます(^^)
さて、抹茶は粒子が細かいためダマになりやすく、静電気で舞い上がると周りに飛び散り掃除が大変になるといった特徴も持っています。
ダマのままお茶を立てると、口あたりが悪くなるため絶対NGですよね。もしダマになってしまったら、丁寧にふるいにかけてから棗へ移しましょう。 お茶会の直前に茶杓で静かにすくって多めに入れておくのが良いとされています。
ちょっと深い話ですが、棗の盛り方は「山形」が流儀。
お茶を出すたびに崩れていく山の形も、茶道では景色と呼ばれお客様の目を楽しませるのです。なんと風流な。
なるほど、そのために棗の中に抹茶を大量に入れておく必要があるのですね!
2.棗(なつめ)の種類
棗は形状・漆・装飾で分けられます。
形状
棗の形は、千利休がこよなく愛し世間に出したものの中から、如心斎(じょさいしん)が12種を選出しました。
※如心斎(1705~1751):千利休以来の、千家の道具や記録類を整理した人物。
菊と桐の蒔絵(各大小)4つを追加した16個が【利休形】として現代に伝承されています。
【利休形の16種】
- 桐棗小
- 桐棗大
- 菊棗小
- 菊棗大
- 下帳棗
- 白粉解(おしろいとき)
- 薬器(やっき)
- 一服入棗
- 鷲棗(わしなつめ)
- 小棗(しょうなつめ)
- 中棗(ちゅうなつめ)
- 大棗(おおなつめ)
- 茶通(さつう)
- 面中次(めんなかつぎ)
- 雪吹小
- 雪吹大
棗には大きさの違う「大棗」「中棗」「小棗」と、形の違う「平棗(ひらなつめ)」の合計4種類あります。
- 大棗(約8cm)
- 中棗(約6.6cm)
- 小棗(約5.0cm)
全体が横に広がった、平べったい平棗(ひらなつめ)は白粉解が変形したものです。
通常の棗の形とは違う、お茶っぱを入れる茶筒をギュッと凝縮したような中次形(なかつぎがた)もあります。細かく分類すると次の4つです。
- 真中次(蓋と本体の合わせ目が中央にある)
- 面中次(蓋の縁が大根の面取りをしたような形)
- 茶桶(面中次の蓋部分の割合が少ないもの)
- 雪吹(茶桶の底もきれいに面取りした形)
利休形以外にも、珠光棗・紹鴎棗・長棗のようにさまざまな形があります。
塗・装飾
棗の主なベースは漆塗りです。
室町時代などでは柄よりもまず形で良さが決められていましたが、徐々に色や装飾に手が加わるようになります。この頃から「黒塗」といわれる黒漆の始まりました。
棗本体が無地黒塗の棗は、真塗(しんぬり)といい、シンプルながら塗の技術力が問われる塗。ゴミやホコリはもちろんのこと刷毛目も目立つ為ため職人にとってはごまかしの効かない塗り方とも言われています。
次に登場したのが溜塗(ためぬり)。
下地・朱色で中塗りを行い、半透明の飴色がかった透き漆(すきうるし)を重ねています。
※透き漆:生漆をかき混ぜて成分を均一にしたり、加熱で余分な水分を取り除いたりして精製し作ったもの。鉄粉を入れると黒漆・顔料を加えると朱や緑の色漆になる。
使い込むほど朱色が良い味を出し、色の移ろいを愛でられる点も愛好家に喜ばれているポイントです。
しかしまだこの段階では、現在のような豪華絢爛とまでは言えずさりげなさが残ります。
棗を一気に華やかにしたのが一閑張(いっかんばり)という技法。
中国から日本に来た、飛来一閑(ひらいいっかん)が伝えたとされる一閑張は木地へ和紙の貼り付けと乾燥を繰り返し、その上描いた模様や絵の原型を抜き取ります。その上から漆や渋柿を塗り 完成。
一閑張りは細やかなタッチが可能で、それまでの棗に豊かなデサインと鮮やかな色彩を与えたのです。
さらに華やかさを増したのが蒔絵(まきえ)。
直接本体へ漆で色付け・絵付けを行い、漆が 乾く前に金粉・銀粉を散らしたなんとも艶やかな仕上がりが特徴です。
- 梨子地:元の素朴な茶道の趣きを残しながら金粉や銀粉をまき、上から漆を塗りあえてざらつきを出す
- 沈金(ちんきん):本体に直接絵を掘り金粉や銀粉を散らす
- 研出蒔絵:金粉をまいて漆を塗った後磨き上げる
どれも美しく、棗の可能性を広げようと試行錯誤した職人たちの情熱を感じますね!
3.棗(なつめ)の歴史
こんなに魅力的な棗を、最初に作ったのは誰か?
室町時代の塗師「羽田五郎」ではないかと言われています。
残されている文献によると、棗の始まりは羽田五郎が茶人の村田珠光のために作ったものとのこと。
しかし実際に茶道具として棗が世間に登場したのは、羽田五郎が亡くなった後の「津田宗達の茶会(1564年)」でのことでした。
室町時代に棗がブームとなり、それ以降茶会でも使われるようになったとされていますが、当時は茶道具としてだけではなく花や薬を入れるのにも使われていたのだそう。
棗の起源にはまだまだ多くの不明点が残っているのです。そこもまた魅力ですね!
当時は茶道具は特別に扱われてきました。
土地や金銀財宝にも匹敵するほどだったと言いますから、現代とは比べものにならないほど高級品だったことが伺えます。
茶道が盛んであると同時に、国同士の戦が絶えない時代だった安土桃山時代。戦果をあげた報酬として、限りがある土地や金銀の代わりに、棗を含む茶道具が用いられます。
戦国大名からいただくものというありがたみ、芸術性の高さなどが武士の間で人気となり、その価値が高まったのかもしれませんね。
そして江戸時代、有名な千利休が棗を利用するようになり、多くの茶人や一般市民に親しまれるまでになったと言われています。
その後時が経つにつれて、サイズが小さくなっていきました。
現在でも棗を含む茶道具は高級な印象がありますが「高くて手が出せない!」というほど高価ではありません。
お気に入りの棗を眺めながら、室町時代や安土桃山時代に想いを馳せるのも、通の楽しみ方かもしれませんよ(^^)
4.長持ちするお手入れ方法
せっかくなら棗の美しさを長持ちさせる保管方法が知りたいですよね。
一緒に見ていきましょう。
①お茶会のあと、余った抹茶を棗から出して(遮光性のある)缶などの密封容器へ移す。
②羽箒(はねぼうき)などで、棗の内側に残った抹茶や外側に付着した抹茶を払い、乾いた布や懐紙・ティッシュペーパーなどで優しく拭きとる。
③陰干しで完全に乾かしてから蓋をして、乾燥剤と一緒に木箱で保管する。
実は水分を含みやすい棗。カビ防止のためにも使わないときは、風通しがよく湿気が少ないところに置きましょう。
また漆塗りの棗は直射日光に弱いため、光が差し込む場所は避けて保管を。高温多湿・雨に濡れるところもNGです。
絶対にやってはいけないのは【洗剤や水で洗う】こと。
沈金や蒔絵、塗りなどの装飾が剥がれるなど甚大なダメージを与えてしまう恐ろしい行為です。!
最悪の場合、棗が割れてしまうので絶対にやらないでくださいね!
割れなかったとしても洗剤の臭いが染みつく・湿気がこもってしまい抹茶が湿気るというリスクもあるのです。 まさに百害あって一利なし。
どうしても汚れが目立つ場合は、お湯に浸して固く絞った布でやさしく拭き、乾いた布で乾拭きするのがオススメです。
(うっかり抹茶を入れっぱなしにしてしまうと、カビが生える・臭いが残るなどのトラブルになるので注意しましょう!)
最後は棗を収納する木箱についてご案内します。
木箱に入れることで
- 外の衝撃から守る
- 湿気を取り除き過剰な乾燥も防ぐ
など、棗を良い状態で保管するための必需品と言えます!
中でも桐の箱は高級感があり、香りや手触りの良さなどから人気。
もし木箱がない場合は仕覆(しふく)に入れるだけでも違います。
※仕覆:茶道で使う茶入や茶碗などの道具を入れる袋。
昔ほど高価ではありませんが、棗は今でも気軽に買うものではないですよね。だからこそ丁寧に扱って長く愛用したいものです。
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