2022.03.07
【作家紹介】① 徳田八十吉 ~九谷焼の名工 受け継がれる伝統と技~
徳田八十吉(とくだやそきち)
現在まで四代続く、九谷焼の名門です。
もともとは初代徳田八十吉、個人の名前でしたが子・孫・ひ孫と3人の「徳田八十吉」に引き継がれ、今日に至ります。
4代続くと言っても、その作風もさまざま。
その中には、人間国宝認定や国内外での受賞などを受けている八十吉もいます。
今回は初代~4代目までの徳田八十吉と、それぞれの個性的・独創的な作風についてご紹介します。
初代 徳田八十吉(1873〜1956年)
初代徳田八十吉は、染物屋の長男として石川県に誕生しました。
最初は日本画家を志し、荒木探令(たんれい)や山本永暉に師事して日本画を学ました。
のちに九谷「松雲堂」で義兄の松本佐平に陶画を学び、輸出する作品の絵付けを手伝うようになります。
青・黄・紫・紺青の四彩を用いる、古九谷吉田屋の「青手」の再現を目指しました。
独立後は陶画業を営みながら、顔料や釉薬(ゆうやく)の研究・改良など九谷五彩の研究に没頭。「深厚釉」というオリジナルの釉薬や多くの釉薬を生み出し、高い評価を得ました。
1953(昭和28)年に、上絵付(九谷)の分野で「助成の措置を講ずべき国の無形文化財」に認定されました。
【銘】
【九谷八十吉】を用い、一般的に「八」の字が下の「十吉」に大きく掛かっているものが、初代徳田八十吉の銘の特徴とされています。
門弟には
●浅倉五十吉
●太田喜一
●松本佐吉
など、優秀な作家を多く輩出した初代徳田八十吉。
晩年には、硲伊之助や中村研一などの洋画家にも絵付けを挑戦させるなど、近代九谷焼の発展に寄与しました。
【代表作】
萬歳楽置物
闘鶏図平鉢
二代目 徳田八十吉(1907〜1997年)
二代目徳田八十吉は、石川県能美郡で醤油商の五男として生まれましたが、15歳の時に徳田家の養子となり、初代徳田八十吉へ弟子入りしました。
図案を浅野廉に、陶彫釉薬を安達正太郎に、日本画を玉井敬泉に、富本憲吉に陶画を7年学び、近代的な九谷焼の発展に大きく貢献しました。
徳田魁星として活躍していましたが、初代徳田八十吉の没後の1956年に【二代徳田八十吉】を襲名。
初代の伝統的な上絵付け技法を受け継ぐ一方で「涌象」という、二種類の色粘土を練り込んで、ろくろ成形した後に上絵付けを施すという、新しい技法の開発にも力を注ぎました。
1958年(昭和33)にブリュッセル万国博覧会にてグランプリを受賞するなど、日本国外でもさまざまな賞を受賞。
1966年(昭和41)石川県指定無形文化財に認定
1978年(昭和53)勲四等瑞宝章受章
近代的な九谷焼を推進した功績を高く評価されました。
晩年には八十吉の名前を長男に譲り、「百々吉」を名乗るようになりました。
【銘】
銘は初代の銘と似ているのですが、「八」の字が下の「十吉」に掛かっていないのが特徴、見分け方になります。
【代表作】
豊秋飾皿
秋映飾皿
三代目 徳田八十吉(1933〜2009年)
三代目徳田八十吉は、二代目の長男として石川県小松市に生まれました。
祖父の初代徳田八十吉から古九谷の釉薬の調合を学び、父である二代目からは古九谷の絵付けや表現技術を受け継ぎました。
1988年に三代目徳田八十吉を襲名し、1977年に人間国宝に認定。
三代目徳田八十吉の作品と言えば、なんと言っても「耀彩(ようさい)」。
耀彩は三代目が独自に考案した技法で、古九谷の四彩(黄・緑・紺・紫)を組み合わせて色のグラデーションだけで作品を仕上げます。
見る者を惹き込んで離さないような深い紺や、目を見張るようなグラデーションの美しさは、まるで1つの宇宙のよう。
1度目にしたら2度と忘れないほどの衝撃的な魅力が特徴です。
今までの九谷焼の大きな特徴である、絵柄(山水・人物・花鳥風月)をまったく使わないのです。
三代目は、西洋美術の影響を受けて絵付けで抽象的な世界を追求したいと考えました。
のちに古九谷の色を用いて宝石を表現したいとの思いから、成分の調合を微調整した数十種類もの色釉を使い、濃淡や対比を表現。乱反射を防ぐため、磨きの工程を丁寧に行って、輝くような光彩を生み出したのです。
独特の世界観を持つ三代目の作品は、日本伝統工芸展や国際陶芸展など数々の賞を受賞し、海外においても高い評価を得ています。
1971年(昭和46) 第18回日本伝統工芸展初出品作「彩釉鉢」優秀賞NHK会長賞受賞
1977年(昭和52) 第24回日本伝統工芸展出品作「燿彩鉢」最優秀賞日本工芸会総裁賞受賞
1990年(平成2) ’90国際陶芸展グランプリ受賞
1993年(平成 5) 紫綬褒章受賞
1997年(平成 9) 第10回 MOA岡田賞大賞受賞
重要無形文化財「彩釉磁器」保持者(人間国宝)に認定
2009年(平成21) 死去 従五位に叙位される
【銘】
徳田八十吉襲名前の『正彦』銘、
三代目、襲名後は赤色で『九谷八十吉』と書かれています。
人間国宝認定後は、金で書かれた『八十吉』銘とを使用されてます。
八十吉襲名前の銘
左・八十吉襲名後の銘 右・人間国宝認定後の金文字
【代表作】
耀彩鉢・創生
耀彩鉢・輪華
四代目 徳田八十吉(1961年~)
四代目徳田八十吉は、三代目徳田八十吉の長女として生まれました。
三代続く九谷焼作家という名家に生まれながら、ニュースキャスターとしてNHK金沢放送局で活躍し、父である三代目徳田八十吉の秘書や着物大使として世界各国を訪問するなど、異色の経歴の持ち主です。
20代半ばで旅をしたアメリカで、中国・景徳鎮の極彩色のつぼに出会い「自分のルーツが漠然とわかった」ことがきっかけで、陶芸を志します。
陶芸界に入ってからは、父三代目徳田八十吉の指導で耀彩の技術を学び、絵付けの技法を受け継いでいます。
最初は本名の「徳田順子」として活躍していましたが、2010年に三代目の死去を受け「徳田八十吉」を襲名しました。
三代目から受け継いだ耀彩の技術をベースにしながら、女性ならではの感性で独自の色彩表現を追求しています。
2008年 第31回伝統九谷焼工芸展技術賞
2009年 第71回一水会陶芸部公募展木下記念賞
2010年 第33回伝統九谷焼工芸展大賞
第51回石川の伝統工芸展獎励賞
2010年 第72回一水会陶芸部公募展一水会賞
2012年 第35回伝統九谷焼工芸展優秀賞
第68回現代美術展エフェム石川社長賞
第53回石川の伝統工芸展奨励賞
金沢城,兼六園大茶会 第18回工芸作品公募展奨励賞
2014年 第55回石川の伝統工芸展日本工芸会賞
金沢城,兼六園大茶会 第20回工芸作品公募展獎励賞
2015年 第71回現代美術展北國賞
2016年 第39回伝統九谷焼工芸展連合会理事長賞
第4回陶美展獎励賞
2017年 第73回現代美術展佳作賞
2018年 第74回現代美術展能美市長賞
2020年 第43回伝統九谷焼陶芸展北國新聞社賞
四代目徳田 八十吉 襲名前の銘
四代目徳田 八十吉 襲名後の銘
【代表作】
彩釉扁壷「暁」
彩釉花瓶「拈華」
まとめ
いかがでしたか?
今回は、九谷焼の名工【徳田八十吉】についてご紹介しました。
初代から四代目に至るまで、作風はそれぞれに異なりますが、九谷焼に真摯に向き合い研究を重ね続ける姿勢は共通していて、そういった絶え間ない努力と飽くなき探求心こそが、数々の受賞や海外での高評価につながっているのではないでしょうか。
また滋賀県 高島市には、初代から四代目までの徳田八十吉作品を一同に観覧することができる、常設型施設【徳田八十吉資料館】があります。
4人の八十吉作品が一堂に会し、それぞれの技をじっくり見比べて、九谷焼の魅力を心行くまで堪能してみたいですね。
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●作品本体の傷の有無
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●鑑定書のような付属品
などが揃っているか、
●作者の銘の種類や人気が高い柄の作品かどうか
といったことが挙げられます。
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